◆ 湿度制御温風処理の効果検証は、これまで以下の2方針で実施しています。第一の方針は、十分な殺虫や殺菌効果が得られるか?であり、 第二の方針は、対象物への影響や毀損が発生しないか? です。
◆ 建造物における殺虫効果の検証は2種類の方法で行っています。一つは処理前と処理後の建造物における虫害調査(主に捕虫トラップ調査)です。もう一つは、加害昆虫と同様の熱耐性を有する供試虫(成虫・蛹・幼虫・卵)を仕込んだ人工飼料を仕込んだ木材を覆い屋内に設置し、処理後の虫死率や再発生の確認を行う方法です。用いる木材としては対象建造物における最大断面と同じ大きさの断面部材の両端を断熱し、材の中心に人工飼料を設置します。
◆ 対象物(建造物)への影響は、木地・漆・彩色部分の色(色差)、変形、亀裂や剥離などの性状の変化、部材のひずみ、含水率などの観点から評価しています。
◆ 色(色差)については、色差計を用いて、処理前後の色に関するパラメータを計測し、有意差検定を行っています。この測定は、実際の部材と別途用意した彩色手札を用いて実施しています。
◆ 変形、亀裂や剥離などの性状変化については、実際の部材について観察定点を設けてそこでの処理による変化を観察記録しています。また彩色手札についても観察定点を設けてそこでの性状を顕微鏡を用いて観察し、変化の有無を確認しています。
◆ 部材のひずみについては、ひずみゲージを用いて処理中の部材のひずみを連続的に計測し、許容限界以下であるかどうかを判定しています。許容限界値は、対象建造物ないしは近隣の建造物において1年間連続して計測した環境の温湿度変化によるひずみの最大値変化量としています。
◆ 美術工芸品(動産・小物)についても同様の手法で処理による影響の評価を行いますが、対になる試験体がある場合には、処理と無処理の試験体を詳しく調べる手法も用いています。
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◆ 書誌類の殺菌効果検証では、処理区と無処理区を設定して、処理後の菌類を採取し、培養の結果を検討する他に、色差計測、強度計測、繊維の顕微鏡観察や外観検査などを行っています。また実験的に処理中の紙類のひずみ計測も行っています。
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